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目次
➊ 研究会の目的
発展途上国の都市化は、インフラの欠如や土地所有権の不在、建築法規からの逸脱などの特徴を有するインフォーマル居住地の急増を招いた。 従来の都市計画に基づいた秩序と無関係に生成するそれは排除の対象と見なされてきたが、現在では都市貧困層の住宅需要の受け皿となるだけでなく、 住み手の自律的な生活実践に裏付けられた固有の居住文化を有する居住地として注目されている。 すなわち様々な慣習的規範により秩序づけられる彼らの「リアリティ」を捉えるには、法に基づくフォーマル/インフォーマルの2元的把握では限界がある。 実際にそれぞれの現場での最前線の実践・研究活動では、動的な居住文化把握から実空間の改変へと至るまでの方法が芽生えつつある。 そこで本委員会を立ち上げ、都市インフォーマリティの「リアリティ」と協奏する現地実践の共有から、新しい汎用的な計画理論と実践手法の構築を目指す。
➋ 設置の理由
これまで世界各国のインフォーマル居住地を対象とする研究が蓄積されてきた。 しかしいずれの研究も、調査地ごとの固有性を抽出するに留まり、 インフォーマル居住地で暮らす人々の「リアリティ」を捉える汎用的な理論として普遍化・体系化されていない。 また現地社会での実践と研究の連動、そして現地住民と調査者の関わり方などの方法論に関する検討も不十分である。 この状況を打破するには、世界各国のインフォーマル居住地において、現地での調査研究と実践双方を両立するフィールドワーカーを招集し、 それぞれの研究成果や方法論を共有・統合・発展するための議論の場が必要だと考え、本委員会の設置を着想するに至った。
➌ 2020~2022年の活動計画
- 各委員による調査研究および現地での実践に関する報告会の開催(年6回)
- 世界各国のインフォーマル居住地を対象とした研究動向の整理、図面資料の採集
- 建築学会大会などにおける公開研究会の企画実施
- 各委員の研究成果や既往研究動向、図面資料、公開研究会での議論に関する情報を国内外に発信するホームページの開設
➍ 予想される成果・効果、達成の可能性
上記の活動を通じて、インフォーマル居住地の「リアリティ」を捉える汎用的な理論を構築すると共に、 理論に基づく現地での実践のための方法論を整備する。 これらの成果は公開研究会やホームページで国内外に発信することで、現地住民に受け入れられる居住環境改善手法にくわえ、 インフォーマルな生活実践とフォーマルな都市計画の共存を可能にする居住地モデルの開発への展開が期待できる。 委員には、アジアやアフリカ、ラテンアメリカのインフォーマル居住地や再定住地において、 第一線で活動する建築計画や建築設計、都市計画、建築生産を専門とする研究者を招集する。 研究テーマもインフォーマル居住地の構成原理の解明や再定住地での住まい方、現地での実践と方法論の検討などを網羅する。